『ただ生きる』

瀬古浩爾 最近、夢について、強く願えば叶う。書いたら叶う。などなど、叶う本や、SNS をよく目にしていました。私もその気になってやってみました。うーん、できない。成功者?の彼や彼女は、いとも簡単に、桁違いのお金を稼いだ話をしています。でも私はやり方が違うのか、うまくいかない。悶々としていた時に、本書に出会いました。

 著者は、生きることについて「ただ生きる」を推奨し、幸せやお金持ちになるために生きているのではない、と述べています。目標をもって生きることももちろん否定はしていません。そして著者は次のように続けています。「その『ただ生きる』を彩るために、趣味嗜好などを愉しみ、まっとうな人間関係を築くための『人間元素』の涵養をするのである」(p.4より引用)。「人間元素」とは、著者によると、配慮、気遣い思いやりなどを指しています。本文に入る前に、いきなり目を覚まされました。なぜお金持ちになりたいのだろう? そもそもお金持ちになるとは、自分を相対化して捉えていて、そこには絶対的な私がいないような気がしました。では、私のなりたいもの、夢って何だろうと自問自答しながら読み進めると、夢について次のような文章に出会いました。「いくつになっても夢は持てるのです、って、やかましいわ」(p.31より引用)。爆笑!! 先にも述べましたが、著者はもちろん、夢を見ることを否定しているのではありません。夢を「持つべきだ」という世の中に、そんなことしなくてもいいんだよと、もっと目の前を楽しみなさいよ。と言われた気がしました。そして、その生き方で本当に良いの?と改めて訊かれるから答えようとして、不安になる。そのような時は、「『どうする?』もへちまもあるか、と思っていればいい。『どうもしない』あるいは『好きにする』でいいのである。」(p.33より引用)。著者は自信をもって自由に生きていいを示しています。ただ、その時に、人に生き方を訊いたり、他人に人生を預けたりせず、自分で判断し自分で決めること、そして、自分が幸せであることを他者にいちいち言う必要がないこと、を示唆していました。

 では、自分らしく生きるというのは、どうすればいいのか。それは「フリーランスになって、奇抜な趣味を持つ、それが自分らしいわけではない」(p.90より引用)とはっきりと指摘しています。自分を理解してその上に、自分で判断し決定したことを積み上げて生きれば、それが自分らしい人生だと述べています。強く生きることや、美しく生きること、なども示されていました。

 その中で私は、1日1日心静かに暮らす、の項目に心惹かれました。人間として生きていくための要素には「自然元素」と「人間元素」があると示されていました。「自然元素」とは、「花鳥風月の中でも『特に目を洗われ、心が動かされる、しみじみと癒されるような美しい風景」(p.187より引用)のことで、「人間元素」とは、「人間としての思いやりややさしさ、公正さや正義感を教えてくれる」(p.187より引用)もので、こちらは必要不可欠と示されていました。さらに、「人間元素」は「言葉元素」「文化元素」により支えられていると述べられています。それぞれは、「柔らかい言葉遣いや日本語に固有な美しい言葉遣い(慈雨・朝焼け・菖蒲など)の『言葉元素』と音楽、美術、彫刻文化、伝統工芸などを知る『文化元素』」(p.187より引用)を指しています。

 これらから、思いやりを持って、自然の美しさを感じ、美しい日本語を味わい、音楽や伝統工芸を学び、丁寧に内面を磨きながら日々を送ってみようと思いました。「ただ生きる」人生それ自体が目的だとも述べられていました。必死になって力まなくても、時々立ち止まり、鳥の美しい声や自然に感動し、美しい日本語を使い、静かに生きていくことがとても豊かに輝いて見えてきました。

 ふと窓の外に目を向けると、満開だった桜が、はらはらと舞っていました。奥ゆかしく、とても美しい光景です。視線をその木の幹に向けると、若い新芽が力の限り勢いよく顔をのぞかせ光り輝いています。なんともすがすがしく素晴らしい光景です。焦らず、その時、その時に愉しみを見つけながら、自分のペースで自分の人生を生きていくことを後押ししてくれる一冊でした。

笑いヨガ教室 京都・北山

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