田山花袋 主人公の文学者である時雄が33歳の時、19歳の女子大生芳子が弟子入りすることになった。時雄には、3人目を身ごもった妻がいた。弟子入りするにあたり、文のやり取りだけだったため、芳子がどのような女性かわからなかった。しかし、やってくると、ハイカラな美しい女性であった。
時雄は倦怠期の妻にばれぬよう、芳子と不倫がしたくて妄想を巡らす。しかし、一向に実行できずに妄想が膨らむ。そんな時に、京都に旅行をした芳子は、同志社大学の2年生田中君という男性と恋に落ちる。自分だけのものと思っている時雄は彼女と田中を表面では、二人が結ばれることを伝えながら心の中では、どうにかして、彼女から田中君を引き離すことしか頭になかった。そして時雄が執着していた肉体関係についても芳子はついに白状すると、時雄は怒って芳子は父親と実家に帰され田中から、芳子を奪い取ることは成功した。その後、時雄は芳子をなつかしみ、愛おしさで、自分の家に下宿していた芳子の部屋に入り、彼女のリボンや布団を引っ張り出して布団を引き、そこで彼女のにおいをかいで、泣く。
今読むとこの時雄は何してくれたんだろうと腹立たしい気持ちになるが、当時は大ヒット作品であったそうだ。それについては、明治・大正期で唯一、恋愛における嗅覚につい言及していることと、不倫の心理を見事に描いていることが挙げられるからだそうだ。
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